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潔い。西武行が渡辺久信らしい最後だったのかもしれない。プロってGMたちしたラストメッセージ埼玉西武ライオンズの今季最終戦となった9日の楽天戦後 。は勝GM兼監督代行の退任会見は楽天モバイル内の一室で、和す後輩担当記者約10人による立ったままの囲み取材だった。渡辺督代現役生活は西武からヤクルトへ移籍し 、久信兼監スポーツ え台湾で終えた。に残「引退試合をやっていないんだよ」と笑い飛ばしたこともあったが、西武行が08年にチームを日本一へ導き18年、プロってGMたちしたラストメッセージ19年のリーグ連覇をフロントとして支えた。は勝そんな功労者でありながら退任会見はひっそりとしたものになったが、和す後輩急ごしらえでADボードにかけられたレオマークの球団旗の前で目を潤ませながら熱い思いを吐露した。渡辺督代スポーツ の 神様 たち 野球「私はこのライオンズが好きですし、久信兼監すごくいいチーム 。に残西武という会社も非常にいい会社だと思っています」。西武行が入団から41年。その年数は西武現役時代の背番号と同じ数字だった 。
会見ではGMに監督代行を兼ねることになった5月の交流戦前に「松井監督を休養させてしまった」ことで 、シーズンの結果はどうあれ今季限りでの退団を決意していたと明かした。この時点で首位へ15・5ゲーム差、CS圏内の3位には10・5ゲーム差も離されていた。前回 、指揮を執った08年からの6年間は5度のAクラス。言わずもがな、この時期と比べても戦力不足は否めず中軸に期待していたアギラー 、コルデロといった新助っ人が故障に不振で2軍へ 。支援もなくトレードなど補強もままならず、現有戦力での戦いを強いられた 。
編成トップとしての責任を感じながら 、どうすればチームの雰囲気を変えられるかを常に考えていた。勝てば“自腹を切って”選手を鼓舞し、激励 。遠征先で外食に出かけた店で選手と一緒になれば、さりげなく勘定を済ませた。しかし 、笛吹けど踊らず。GMとしてネット裏から戦いを見つめてある程度はわかっていたつもりだったかもしれないが、いざベンチに腰を下ろすとその温度差を肌で感じた。本拠地・ベルーナドームの三塁側ベンチからロッカールームへ続く通路の白い壁には 、名将・三原脩氏が残したいくつもの名言が記されている 。その一つが「アマは和して勝つ、プロは勝って和す」 。そのフレーズが頭から離れなかった 。“新人類”と呼ばれた自身の若手時代は「楽しかったからね」と飲むだけ飲んで本拠地でも遠征先でも朝帰り。しかしながら練習は休まず、試合できっちり結果を出してきた。90年代初頭は西武の黄金時代。辻発彦 、秋山幸二、工藤公康、清原和博…。そうそうたる顔ぶれはなれ合うことはなかったが 、いざ試合になると同じベクトルを向いていた 。「プロって勝って和す。お友達同士じゃないというか、個々の選手の戦いというのがプロ野球 。それが集まって優勝したら喜びあうのがプロだと思う。今の選手というのは 、そういう意味で(今季は)プロの厳しさをだいぶ味わったと思う 。頑張ってくれると思う」と期待を寄せた。
今季は143試合49勝91敗3分 。その数字は優勝したソフトバンクと裏表で 、91敗は前身を含めて球団ワースト。担当記者として敗戦の会見に立ち会うことがほとんどだったが、松井監督も渡辺監督代行も143試合すべてで試合後の会見に応じてくれた 。時に怒りで顔を紅潮させて、声を荒らげる時もあった。論ずるに値しない試合もきっとあったはずだが「負けず嫌い」と言ってはばからない渡辺監督代行もきちんと応じてくれた。「前回、監督やった6年間も取材を拒否したことはないと思う。私からメッセージを出すことはすごく大事なこと。評論家で2年間メディアの中にいたので、メッセージを出すということはすごく大事とわかっていた 。言葉が少ないときもあったけど一言 、二言はメッセージは出していた」。それもまた、ファンを大切にする思いがあったからこそだ。
シーズン終盤。渡辺監督代行は現役時代から契約しているSSKにグラブを発注した。「なんだか、少年時代に戻ったみたいだよね」とそれこそ少年のような笑みを浮かべながら、硬さが残って左手になじまないグラブを手にキャッチボールをして、打撃練習の球拾いをするために外野へのそのそと走っていた。そのグラブは黒を基調に網目などにオレンジ 。「ジャイアンツみたいだな」 。母校・前橋工のユニホームも同じ色合いのデザインだ。
GM職は12月31日までの任期だが 、すでにフリーの立場という認識でいる。今後の予定を問われて「ゆっくりしますよ 。41年間 、プロの世界で戦い続けてきた。(2人の)子供たちも独立して大きくなって孫もいる 。一番苦労かけた家内にゆっくりしてもらおうかなと 。1週間に1度くらい食事でも作ろうかな」と笑いながら答えたが、そこは根っからの野球人で出身地の群馬、母校を心の底から愛する“漢” 。「学校の周りのゴミ拾いをするようにOBに言っているんだ 。そうすれば21世紀枠で甲子園に出られるかもしれないから」とガハハ笑い。学生野球資格回復をした渡辺久信が黒とオレンジのグラブを手にして10年のセンバツ以来となる甲子園に、母校を率いて聖地に立っているかもしれない 。
(記者コラム・秋本 正己)
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